多機能型就労継続支援アルク
代表取締役 二木 悦郎 様
多機能型就労継続支援アルクを運営されている、代表取締役の二木 悦郎さんにお話を伺いました。
Q: これまでの経緯を教えてください。
A: 長年勤めていた教員を退職したことから始まりました。辞めてから将来のことを考えているときに、どうせ仕事を変えるなら人にかかわる仕事をしたいと思い、まずは特養に入りました。もともと障がい者支援をしていきたかったのですが、介護から学んでいった方がいいという助言をもらい約10年働いて、その後障がい者支援の事業を始めました。
Q: 立ち上げから8か月経っていると思うのですが、振り返っていかがですか?
A: もう、あっという間です。1番最初に立てた目標設定・目的と照らし合わせると、最初のゴールが3か月早く来てます。全体的な部分の進行具合は、3年くらい早まってると思います。これは私と一緒に働いてくれてるサポーター社員の力です。
弊社の経営の特徴は、創業当初よりティール組織を推奨していることです。ティール組織とは、セルフマネジメント型のチームと個人の自立した意思決定ができる仕組みのことです。最終的には組織が報告のみで、回るくらいを目指しています。
最近はサポーターから「今まで縦社会でお伺いを立ててやってきたので、自分の意思で決めていくという環境になかなか適応できないもどかしさを感じる」という声が上がります。私としては嬉しい声ですね。ティール組織実現のために、上の決裁権限などを一気に取っ払っているので、この悩みは当たり前だと思います。
悩みや経験を通してサポーターには、戦略を持って勝負できるくらいのレベルまでになっていってもらいたいです。その先に、障がいを持った利用者が活躍できる就労支援事業所ができると思います。
Q: ARKさんの仕事内容について教えてください。
A: スタートは飲食店の居酒屋フタキを復活させたことです。去年の12月の半ばから準備をして、1月の半ばにはもうオープンさせました。まずはお弁当から始めようということで、私が営業をしていたところ、近隣の福祉事業所をはじめさまざまな方にお弁当を注文していただきました。今では居酒屋も始めています。もともと数年後に進めようと思っていたのですが、サポーター社員がやりたいと手を上げてくれて、計画が早まりました。
次に都城市の布団会社さんから、商品として売れない布団や切れ端などを預かって布と糸を取って綿だけに戻す仕事もいただきました。布団会社さんにはまったく収益のメリットはありません。僕が支援を立ち上げるということで、応援してもらいました。
24年度に入ってからは、SOUMATCHより物流倉庫での庫内作業や、また昔の教え子とのつながりで、ハウスクリーニングのお仕事もいただいています。ほかにも食肉の加工会社の梱包のお仕事やコーヒー事業、キッチンカーの運営委託などを行っていく予定です。
さまざまな会社の方とお話させていただいて、日々のつながりの中でお仕事が生まれてきてると実感します。
Q: 二木さんが支援をするうえで、大切にしていることはなんですか?
A: 目的と目標設定です。ビジネスコーチングのマスターの資格を取って企業の研修なども行っているのですが、最近思うのは健常者であれ障がい者であれ、目的・目標がしっかりできることによって、サポート内容が明確に見えてくることです。共生社会を作るという意味では、障がい者と企業が必要とする仕事の能力のマッチングが第一のステップなのかなと思い、この就労継続支援事業所でスタートしています。
福祉に携わっていて普段思うのは、レクリエーションみたいな仕事をするところが多々あると感じます。目的のあるレクリエーションならいいんですよ。ただ目的もなく利用者さんを喜ばせるだけであれば、私は生活介護でいいと思っています。
就労継続支援はどのように社会に出していくのか。これからは企業から必要とされる人材をどれだけ作れるのか。そこを担う事業をどれだけ作れるかだと思います。やはりARKから本来の一般の企業へいかにステージを上げていけるかが大切ですね。
Q: 働くことを通じて利用者さんの変化はありましたか?
A: たくさん変化した姿を見てきました。例えば、引きこもりで無口だった21歳の男性は、今では自分から話しかけて挨拶をしてくれるようになりました。前向きになって、最初の暗さが嘘のようです。仕事にも意欲が出てき始めてますね。本当に仕事をしてるんだという感覚になってると思います。利用者さんの表情の変化を見るのが楽しみだし、利用者さんもできることが増えていく楽しみがあると思います。
利用者さんの変化を促すうえで、サポーターにも働くことの意味合いを教えています。「時給900円いただくのであれば、1日2,700円の収益を上げている仕事をしてないとダメ」と常に伝えていますね。サポーター側から、働く意味を意識しながら業務をすることで、利用者さんも変わっていくかなと思います。
利用者さんの中には仕事を始めて1〜2週間はかなりきつい表情をしている人がいます。そういった利用者さんにただ寄り添って、声をかけるだけではだめだと思うんです。きついと言っていたら、なぜきついのか、なにが大変なのかしっかり話を聞いて、根本の課題を解決してあげる。根拠をもって前向きな言葉をかけてあげることで、次の日も利用者さんが明るい表情で来てくれます。サポーターもまだまだ支援力が足りていない部分があるのですが、よく相手の話を聞くということを大切にしています。
Q: 今後の展望について教えていただけますか?
A: ARKに入ったサポーターがノウハウを受け継いで、最終的には独立してもらえればと思います。ARKで学んだ人の育て方や組織の作り方、人の能力の引き出し方などを作って、サポーターが独立して大きな社会を作っていきたいです。独立した会社同士で協力していければ、社会全体が変わってくるかなと思いますね。ARKモデルを作っていきたいです。
そのためにはまずはこの3〜5年以内に、A型から最低でも毎年3人以上一般就労につなげていきたいです。5年以内で今のA型の利用者さんを9割入れ替えて、今度は定着する方向にも力を入れていきたいと考えています。
事業所名 | 多機能型就労継続支援アルク |
代表取締役 | 二木 悦郎 |
ホームページ | https://www.arkwelfare.jp/ |