平等な歯科診療、そして障がい者の本当の自立のために

インタビュー

奥原歯科医院
院長 奥原 利樹 様

目次

Q: どのようなコンセプトの歯科医院かを教えてください。

A: 一般の患者さんはもちろん、障がいのある方や来院が困難な方にも分け隔てなく診療できる場所であることが、当院のコンセプトです。また、歯科治療だけでなく、障がい者の方の自立支援のための福祉マーケットの運営なども行っています。

開業当初は一般的な歯科医院として立ち上げ、運営していました。広島大学の歯学部で学び、研修医までは広島にいました。
まだ全国の歯科大学に障がい者歯科治療が浸透していなかった頃、大学病院内に「障がい者歯科治療室」ができ、研修医として毎日、自閉症や知的障がいをお持ちの患者さんとの治療に携わる機会がありました。

当時は町の一般歯科医院が障がい者の診療を行うという概念がなかったため、島根や鳥取など遠方から県をまたいで広島大学病院までたった10~15分ほどの治療のために何時間もかけて足を運んでおられました。
そこで障がい者の方々の治療に参加できたことはとても貴重な経験でした。それがきっかけで漠然とですが、いつか障がいを持った方をはじめ来院が困難な方も治療できる歯科医院を作るということを、20代の頃から思い描くようになりました。

埼玉に来て一般的な歯科医院の勤務医として4年ほど経験を積んでから独立開業したのですが、院内も落ち着いた6年目(約20年前)に訪問診療を始めました。在宅で寝たきりの高齢者の方など、高齢化社会を見据えたうえでの判断でした。
その後ご縁があり病院の精神科の患者さんたちの診療をすることになり、認知症や精神障害をお持ちの方などなかなか他の医院で診てもらいにくい患者さんの診察をする機会が自然と増えてきて、いまに至ります。
 
特にターゲット層を決めず、基本的に希望すればどなたでも診療を受けられる歯科医院です。そういう環境を作りたかったので、研修医の頃からの思いが今形になってきたと感じています。

Q: 障がい者との関わりや、地域の就労支援との関わりを持とうと思ったきっかけは何でしょうか?

A: 障がいもその方の一つの個性だと考えています。私自身も性格や身体が事故や病気等でいつどういう風に変わるか分かりません。そういった観点で考えてみると、障がい者と一般の人を区別する必要はなく、みんなそれぞれの個性を持って繋がっている存在だと思います。

若い頃に目の当たりにした歯科治療の不平等な状況、どうして地域には多くの歯科医院があるのにわざわざ長時間かけて大学病院まで診療に来ないといけないのかという疑問が根底にあったことが、いまの考えや活動に繋がっています。

訪問診療を始めたこと、特に精神科での診療の積み重ねが、いまの医院の理念や就労支援との関りの動機づけになっていることは間違いありません。

Q: 現在、障がいを持った方が院内の清掃業務などを担当されていますが、実際に一緒に働いてみた感想はどうでしたか?

A: 就労支援の事業所を通して来ていただいています。医院のスタッフで手が回っていなかった、清掃や院内のお花のアレンジなどを主にお願いしています。最初はどういった業務からお願いできるか悩みましたが、業務をお願いするようになってかれこれ1年くらいは経ってます。

業務をお願いしてみると、みなさん一生懸命に業務と向き合ってくれて、トイレ掃除を一つとっても、事業所のスタッフさん達にお願いするようになってから本当にピカピカでキレイなったのが実感できます。

そこまでやってくれることに、ありがたい感謝の気持ちと、頼んでよかったという安心感、そして今後もっと医院が必要としているいろんなことを一緒にやっていけるのではないか、という希望を持っています。

Q: 院内での評価や、従業員の働きの変化はありましたか?

A: 慣れない頃は、院内の従業員と障がい者スタッフがお互いに人見知りして、何とも言えない気まずい雰囲気がありましたが、しばらくすると最初の緊張は徐々に打ち解けてきましたし、笑顔で朝の挨拶を交わしたりする中で院の雰囲気がひとつになって活気づいている感じも、とてもいいことだと感じています。

障がいを持つ方への診療はもちろん、就労支援を受け入れることはこれまでやってきたことの延長線上にあり、今現在医院としては当たり前のことになっています。一貫したこの理念を売りにするのではなく、自分達のできる範囲でいいので、まずは「はじめの一歩」を踏み出すことが地域貢献、社会貢献に繋がっているということを少しずつ知ってもらえると嬉しいです。

Q: 今後の取り組みに関して教えてください。

A: 歯科治療だけではなくこの福祉マーケット活動を通して、障がい者の自立に繋がることをしていきたいと考えています。例えば就労作業も習慣的に行っている「できることをする」「作れるものを作る」から『世の中のニーズを知り、求められているものを作る』ことが、十分な利益を生み出し結果的に自立に繋がる気がしています。

今後は販売する場所をただ提供するだけでなく、各作業所が自ら考え目標を立て、それを達成して成長することにより深く携わっていきたいです。

実例が一つでもあれば、このような業務ができ・こういった運用ができるんだ、と実績として広げていくことができます。就労に対してはただ賃金を得るだけではなく、自分たちがどのように企業や社会に貢献しているかを体験できるとてもいい機会でもあります。双方にとって就労支援を取り入れてよかったと思ってもらえる形を、次へまたその次へとご縁を続けながら実現していきたいと考えています。

法人情報
法人名医療法人社団 光志会 奥原歯科医院
院長奥原 利樹
開設1996年
ホームページhttps://koushikai17.or.jp/

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