「障がい者雇用をしたけれど、どう接していけばいいのかな?」「障がいのある方がなかなか定着してくれない」とお悩みの担当者さんはいませんか?実際、いざ障がい者雇用をしてみても、迷いがでてしまう部分です。
そこでこの記事では、障がいのある方との接し方や社内への理解を浸透させるコツなどを紹介します。障がいのある方を雇用してこれからどうしようかと悩んでいる場合は、参考にしてみてください。
障がいのある人の離職理由はさまざま

障がいを抱えている人の離職理由は、障がいの種類によってさまざまです。障がい者就職総合センターの中間報告の概要では、障がい別に以下の理由が挙げられていました。
- 身体障がい者:最も多いのが障がい・病気のためで、次いで業務遂行上の課題。労働条件の不一致が続いている
- 知的障がい者:最も多いのは業務遂行上の課題ありで、次いで人間関係の悪化、障がい・病気のためと続いている
- 精神障がい者:障がい・病気のためが最も多く、人間関係の悪化、業務遂行上の課題が上がっている
- 発達障がい者:障がい・病気のために次いで、業務遂行上の課題、人間関係の悪化が続いている
参考:障がい者就職総合センター「中間報告の概要」
障がいももちろんありますが、人間関係が原因になっていることもあります。障がい特性をしっかり理解したうえで、退職理由になりうるものを解決していく必要があります。
上司も負担感に悩んでいる
障がい者との接し方については、上司も負担感に悩んでいることが多いです。パーソル総合研究所の精神障がい者と一緒に働く上司・同僚へのアンケート調査では、精神的な負担が大きいと感じている直属の上司は、52.6%。同じ部署の同僚は39.3%との結果が出ました。
ただし、できるだけサポートしたいと答えた上司はおよそ90%。同僚はおよそ80%にのぼるという結果も出ています。サポートはしたいけれど、負担感があるという思いを両方抱えているため、より悩みが深刻になってしまいます。
負担感はサポートする精神障がい者に対して、マイナスイメージにもつながる可能性もあります。負担感にならないように社内全体で工夫していく必要があります。
参考:パーソル総合研究所「精神障害者雇用の現場マネジメントについての定量調査 [上司・同僚調査] 調査結果」
【障がい別】障がいのある人と職場で接するときのヒント

障がいのある人と職場で接するときのヒントを紹介します。以下の4つの障がい別に紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
- 身体障がい者
- 知的障がい者
- 精神障がい者
- 発達障がい者
それぞれ解説します。
参考:厚生労働省「合理的配慮指針」
身体障がい者
身体障がい者を雇用する場合、担当者を定めるようにしましょう。視覚障がいを持っているのか、聴力障がいを持っているのか、肢体不自由なのかによってもコミュニケーション方法は変わってきます。スムーズに意思疎通できる方法を定めて、支障なくコミュニケーションが取れるようにしてください。
社内で障がいの特性を共有するときは、プライバシーに配慮しておきましょう。
知的障がい者
知的障がいの場合も、担当者の配置を徹底してください。社内への共有もしておくことが大切です。マニュアルを作るときは、図解や実際の写真を用いて説明する必要があります。
複数の動作を1ステップで一気に説明するのではなく、1ステップずつ記載してください。また、こまめに体調などにも配慮していきましょう。
精神障がい者
精神障がいがある方に対しては、まずは分かりやすく手順を示したマニュアルを作成しましょう。通院などがあるため、お休みや早退、休憩などに配慮してください。雇用が始まったとしても、障がいが完全に治っているわけではないことに留意しましょう。
休憩は作業場ではなく、できるだけ静かな場所に設置してください。もしも休憩中に落ち込んでいたり、体調が悪そうだったりする場合は声掛けをして相談するべきところにつなげてみてください。
発達障がい者
発達障がいがある方に対しては、業務指示・スケジュールを明確にしておくことが大切です。マニュアルは文章だけではなく、図解にして分かりやすくしておきましょう。
また発達障害の方は感覚過敏を持っていることもあります。場合によってはサングラスやヘッドフォンなどの着用を検討してみてください。ただし、業務に支障が出ない程度のものにする必要があります。
職場へ障がい者の理解を進めるポイント

障がいのある人に長く働いてもらうためには、職場にも理解を広めていく必要があります。障がい者への理解を進めるポイントは、以下の3つです。
- 当事者意識を持ってもらう
- みんなで問題を解決する
- 理解を深めるためのイベントや冊子の配布をする
それぞれどのように進めていくべきか、詳しく解説します。
当事者意識を持ってもらう
まずは社内の人に、当事者意識を持ってもらいましょう。私の部署での雇用ではないから、私の部下ではないからという他人事の気持ちがあると、なかなか理解が進まず障がいのある方もなじみにくくなってしまいます。
さらに精神障がいや発達障がいのある方は、見た目では判断できないことがほとんどです。特性を知らずに指示を出してしまうと、失敗につながってしまったり、周りもフォローしにくくなったりしてしまいます。いざとなったときにフォローできるよう当事者意識を持ち、障がい特性について担当者以外の周りの人も学んでおきましょう。
みんなで問題を解決する
障がい者雇用をするときには担当者を配置しますが、一人で背負い込みすぎないようにしましょう。担当者だから自分がどうにかしないとと考え続けてしまうと、負担になってしまいます。最悪の場合、担当者も精神障害になってしまうことも。
1人でパンクしてしまう前に、上司や外部の人に相談できる体制を整えておきましょう。
理解を深めるためのイベントや冊子の配布をする
職場に障がい者と働くことへの理解を広めたいときには、イベントを企画したり、冊子を配布したりしましょう。資料は独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)から出ているハンドブックやリーフレット、DVDを活用するのがおすすめです。
勉強会を開催してどのように感じたか、何を学んだか書き出してもらうことで、振り返りにもなるため、きちんと考えを外に出すということをしましょう。
職場で障がい者と接するときは差別が起きないようにする

職場で障がい者と接するときは、差別が起きないようにしましょう。差別がなくなりつつある職場ももちろんありますが、まだまだ浸透していないのも事実です。日本の法律でも差別をなくすべく「障害者基本法」が制定されています。
差別に当たるのは、以下のようなことです。
- 特定の障がいがあるからという理由で審査対象にしない
- 障がい者であることを理由に賃金を下げる
- 部署異動や昇進条件を障がい者だけ厳しくする
- 障がい者であることを理由に退職をすすめる
合理的配慮の場合は差別に当たりません。障がいを理由に当事者が不利になると、差別になる可能性があります。
さらに障がいのある方に対して、ストレスがたまったからと言って強く当たってはいけません。イライラしてしまうときには、いらだちの原因を突き止めて、解決できるようにしていきましょう。
参考:厚生労働省「【働く障害のある方へ】ご存じですか?雇用分野における障害者に対する差別は禁止されています。」
まとめ

障がい者の退職理由はさまざまありますが、人間関係が原因になることもあります。特性に合わせて接し方を考えていく必要があります。
詳しい接し方については、障がいの種類別に紹介したので、参考にしてみてください。また、障がい者を受け入れるためには、社内の理解を得ることも大切です。JEEDのパンフレットなどを参考にしながら、理解浸透を少しずつしていきましょう。
障がいのある方と上手に接して、協力し合える職場を作ってみてください。